『『源氏物語』前後左右』(加藤昌嘉著、勉誠出版)が刊行されました


  ――『源氏物語』は揺れ動く。平安時代も、鎌倉~室町時代も、江戸時代もそうだった。現在もそうである。一つは、『源氏物語』の本文が揺れ動く、ということである。二つには、句読の切り方によって、文の気脈が揺れ動く、ということである。三つには、どこからどこまでが『源氏物語』なのか、その境界が揺れ動く、ということである。


 上記は加藤先生の一冊目の御著書『揺れ動く『源氏物語』』の冒頭です。唯一無二の完全なる『源氏物語』などというものは存在せず、数多の写本すべてが『源氏物語』である、ということに対して、目が覚めるような感覚を抱く人は多いでしょう。
 今回の御著書『『源氏物語』前後左右』では、作り物語の定義から問い直し、『源氏物語』作者は? 成立は? そして本文研究とは?  という、一見研究しつくされてきたかのように見える『源氏物語』の根本的な謎に解を与える論考が収められています。これまでの源氏研究では慣例となっていた「青表紙本」「河内本」「別本」という概念そのものに対しての論も収録されており、諸本研究を志す学生にとって新たな視点を与える研究書でもあります。
 大学院のゼミで討論中、先生がよくおっしゃっていたことがあります。唯一無二の正しい完本など、平安時代の作り物語には存在しないということ。魅力的な作品は人々に読まれ、書き足され、伝えられ、また注釈を付けられるということ。そうすることによって広がりを見せ膨張してゆく機能を持ったものであること。ひとつひとつの写本を忠実に翻刻し、そして自分の手で現代語訳をすることの重要性等々。 先生の講義やゼミで耳にしていた数々のことばを思い返し、『源氏物語』を再度辿ってみたいという思いも少なからず浮かびました。
 『源氏物語』は、そして作り物語は、読み手の興味・関心を非常に強く喚起するテキストであるという当たり前のように思われることを、改めて認識する機縁となる研究書ではないでしょうか。
 蛇足になりますが、装丁にも注目するべきであると考えます 。表紙の色、文字のフォント 、背表紙の形、目次のデザインに至るまで趣のある作りになっています。

河野かやの(2012年度修士課程修了  浦和実業学園高等学校講師)

 

勉誠出版ホームページに、内容詳細が載っています↓

http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=1&products_id=100342


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