『沖縄古語の深層 オモロ語の探究 [増補版] 』は、2008年刊行された『沖縄古語の深層 おもろ語の探究』に、「ヂャウ(門)の語源」「ウリズンの語源」「自称名詞ア・ワ(我)」「助詞ハの表記・発音」の4つの新説を加えた間宮先生の御著書です。
本書は三部から成り立っています。本土の大和言葉と比較しながらグスク・テダ・オモロなど沖縄固有の言葉の由来を紐解く第一章「沖縄古語の語源」。古典ではおなじみ係り結びの法則が実は『おもろさうし』にも存在し、その実態について考察を深め、また助詞を中心に『おもろさうし』における表記の本質を解明する第二章「オモロ語の文法と表記」。そして語源や文法について新たな視点を唱えた第三章「増補――語源・文法・表記」。
ところで、皆さんは『おもろさうし』をご存知でしたか? 恥ずかしながら私は間宮先生の講義を受けるまでその存在を知りませんでした。御著書の中にも、関西方言の「おもろい」から「面白草子」と想像したり、『おもろさうし』関係の本を購入した際に領収書に『おもしろさうし』と「し」が余計に書かれたりしたエピソードが紹介されています。沖縄イコール『おもろさうし』というほど、知名度が高いとは言えません。
そんな『おもろさうし』について何の予備知識がない人にもこの本はお勧めです。特に、沖縄と遠く隔たっている本土の古語(『古事記』や『日本書紀』・『万葉集』など)と沖縄の古語を比較し、語源や文法の謎に追究していく姿は、まるでミステリー小説を読んでいるかのような驚きと興奮を覚えます。「本当に沖縄と大和の言葉を比較する意義があるのか?」、「『おもろさうし』と本土の古典の共通点とは一体なんなのか?」、「そもそも『おもろさうし』ってなんだ?」。以上の疑問が浮かんだ方は是非ご一読下さい。
また、内容以外に間宮先生の論文の展開法も見所の一つです。とりわけ、言語を基に論文を作成しようとしている人にとっては、まさに教科書のような存在であると私は確信しています。
立石 顕規 (2012年度修士課程修了 高校教員)