『へんちくりん江戸挿絵本』(小林ふみ子著 集英社インターナショナル・インターナショナル新書)が刊行されています。
江戸がいちばんおもしろい、18世紀の珍妙な戯作の作品を挿絵を中心に紹介した本書を、 2月に刊行、先月には電子書籍になりました。
(紹介・立ち読みはこちら)
神仏・思想・学問・文学・実用書・模様図案・怪異、そして日本・世界の地理歴史まで、 なんでも来い!とばかりにパロディしたおした諸作品のハイライトを、 分野ごとにいろいろお見せしています。それを「パロディ戯作から、パロディされる側の江戸時代の文化を照射する仕組み」と評してくださったのは大阪大学の忘却散人先生ブログです。
授業(日本文芸学概論・特講近世など)で扱った作品もあり、学生のみなさんの鋭い指摘も生かしています。私の授業を受けたことのある人は見覚えのある絵も出てくるはずです。ぜひいちど手にとってご覧ください。
【付・懺悔録】
刊行後にいろいろな方から文章の出典や解釈をご教示いただきました。 私自身、以前の注釈書では書いていながら忘れていたこともあり・・・・反省です。
重版にならないかな・・・・と願いつつ、ここに一覧にしておきます。 ご教示くださいました皆さま、どうもありがとうございました。 (電子書籍では簡単な間違いは訂正してあります)
●p8後ろから5行め
(『老莱子』の)天明3〈1783〉年刊→天明4〈1784〉年刊
●p81後ろから7-8行め
位山から連想した木の実の掛詞もうまく詠めています。→
櫟と椎の掛詞もたくみですが、椎のほうは三位になれない源頼政が自嘲した歌(『平家物語』など)を応用したものです。
●p90後ろから5行め
天に至り →天に戻(いた)り
●p108後ろから7行め
~山に孔子の~ →~山には孔子の~
●p122 後ろから5~3行め
・女の二本の脚の間にのぞく三本めを男○○とする
→○○の巨大な男性を三本足とみなす
●p同後ろから2行め
・兎の餅つきを交合時に女性の尻にぶつかるのに喩えてふざける
→老人が萎んだ道具で交合に臨むことの喩え「提灯で餅を搗く」を絵にした
●p152 図83キャプション
一蝶画も→一蝶画を
●p165 後ろから4行め
火炎→臥炎(がえん)
●p220 4行め
聶耳国のルビ しょうじ→じょうじ
【以下、要加筆箇所】
P58 8行め 「体よろよろと足もとの」は謡曲「大江山」「猩々」の「足もとのよろよろと」による
P69 梅で咽の渇きを潤すのは『世説新語』曹操の逸話による
P71 本文「めいたいが」=名代(姉女郎の代理「みょうだい」に出た妹女郎であること)を明示する
p90 「仕周魚」の「七番半」は、道成寺の大蛇や俵藤太秀郷が退治する三上山の百足の「七巻半」による
(日本文学科 教授 小林ふみ子)