『とびらをあける中国文学―日本文化の展望台』(新典社)が刊行されました。
同書には遠藤星希先生(日本文学科准教授)が寄稿されています。
遠藤先生の寄稿された章では「天と地がひっくり返っても」というような有り得ない自然現象を用いた表現について、中国の民間歌謡「上邪」と『万葉集』二七八七番歌の比較を皮切りに様々な文献をとおして、中国と日本の「難題」や「天」にたいする文化的差異の一端が述べられています。
その他の章でも様々な中国古典がわかりやすく解説・紹介されており、比較としてあつかわれる題材もマンガや西洋文学までふくめ幅広く、中国の古典作品をとおして見慣れた日本の文化に新たな見方を楽しく与えてくれるような内容になっております。
ぜひ、お手にとってご覧ください。
以下、書誌情報と出版社サイトからの内容の転載、目次でございます。
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【書誌情報】
発行:新典社
発行日:2021年9月28日
定価:2530円
頁数:308
ISBN:978-4-7879-6853-1
【内容】
私たちの日常の中に隠れた、知的冒険へのとびら。故事成語や伝統文化、水滸伝、金瓶梅―日本と中国の今と昔を行き来しながら、古典を鍵としてそのとびらをあける。そこから見える新たな世界とは。
【目次】
はじめに(高芝 麻子)
第一章 言葉の来た道―心頭を滅却すれば火もまた涼し―(高芝 麻子)
はじめに
一、甲斐恵林寺でのできごと
二、現代のイメージが生まれるまで
三、言葉の歴史を遡る
四、快川和尚の時代
おわりに
第二章 日中の古典作品に見える有り得ない自然現象とその意味するもの(遠藤 星希)
はじめに
一、不能条件としての有り得ない自然現象
二、難題説話の位置づけ
三、天の介入
四、天と天子と人民
五、天を感動させるのも実力のうち
六、中国の「天皇」と日本の天皇
第三章 中日井戸異聞―文学に描かれる井戸描写を中心に―(山崎 藍)
はじめに
一、経典の井戸
二、井戸神の存在
三、閉ざされた井戸
四、様々な場所へと繋がる井戸
五、井戸を詠った詩歌―唐代以前―
六、井戸を詠った詩歌―唐詩を中心に―
おわりに 日本における井戸
第四章 『金瓶梅』宋恵蓮故事を読む(田中 智行)
はじめに
一、くりかえされる物語
二、たかが呼び方、されど呼び方
三、宋恵蓮の最期
第五章 『水滸伝』から考える明清時代のエンタメ小説:白話小説(馬場 昭佳)
はじめに 「文学」とは何だろう
一、明代後期という時代
二、白話小説の特徴:現代の娯楽環境との類似
三、『水滸伝』:白話小説の先駆者
四、現代との違い:著作権のない出版環境
おわりに なぜ古典文学を研究するのか
あとがき(遠藤 星希)