『揺れ動く「源氏物語」』(加藤昌嘉著)が出版されました

  2011年9月に『揺れ動く「源氏物語」』(加藤昌嘉著、勉誠出版)が刊行されました。「物語解釈の愉楽」、「ホンモノの『源氏物語』など、どこにもありはしない。これまでに存在し、いま存在するすべての本が『源氏物語』である」という帯のフレーズが非常に印象的な本書は、『源氏物語』のダイナミズムを文学史に再定立する意欲的な研究書です。こちらに著者へのインタビュー記事も掲載されていますので、本書と併せてご覧頂ければ幸いです。尚、各章の内容は以下の通りです。(勉誠出版さんのサイトより引用)

第Ⅰ部 本文が揺れ動けば物語も揺れ動く
150種とも200種とも数えられる『源氏物語』の現存写本は、すべて異なる相貌を呈している。『源氏物語』は、絶えまなき変異体である。あまたの写本たちは、そうした変異の種々相である。我々は、残された『源氏物語』たちを俯瞰し、それらを、揺動の軌跡として捉えなければならない。

第Ⅱ部 写本を演奏するのは我々である
或る時期に書き写され、今日まで読み継がれ、儼として眼前にある一写本を、一研究者が己の読解力とリズムで活字化して見せること。・・・・・・世に供される古典の整定本文とは、そういうものであると思うのである。例えば、句読点や鉤括弧は、のっぺらぼうの写本を読むためのtoolであり、instrumentである。

第Ⅲ部 どこからどこまでが『源氏物語』なのか
現存『源氏物語』五四帖がすべて一人の作者によって書かれたという証拠は、どこにもない。たとえ作者が異なっていようとも、作中人物の連繋・物語内容の連繋があれば、一つの物語に集合化し得る、というのが、平安時代物語の本性である。極言すれば、『源氏物語』は永久に完成に至らず、今なお生成をつづけている、ということである。

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