2018年度 法政大学国文学会大会プログラム
◆日時:2018年7月28日(土) 13時より受付開始
◆会場:法政大学 ボアソナードタワー 26階 スカイホール
◆プログラム
【大 会】
13:30 開会挨拶
13:45 研究発表
能『邯鄲』作品研究 ―日本で思う中国―
法政大学大学院博士後期課程 李 蘇洋
宮澤賢治『春と修羅』における主体とそのまなざし
— モダニズム文学との交差点 —
法政大学日本文学科 村山 龍
15:00 講 演
噂話と真相 法政大学日本文学科 千野 明日香
【総 会】
16:30 会務報告・会計報告・役員改選・その他
【懇 親 会】
17:00 立食パーティー
会場:ボアソナードタワー 26階 ラウンジ
一般会員:1,000円/学部生・院生:無料
【問い合わせ先】
法政大学国文学会事務局 藤井輝
〒102ー8160 東京都千代田区富士見2-17ー1
法政大学80年館内 日本文学科共同研究室
電話・FAX: 03ー3264ー9752
Eメール: hikaru.fujii.68@adm.hosei.ac.jp
◆研究発表要旨
「能『邯鄲』作品研究 ―日本で思う中国―」
法政大学大学院博士後期課程 李 蘇洋
能『邯鄲』は現行曲として頻繁に上演されている。本発表では、能『邯鄲』の登場人物や事物の描写を、中日両国で流布した邯鄲譚、邯鄲譚と関連を持つ漢詩文の表現と比較して考察したい。主人公の盧生が、『枕中記』での不遇を嘆く少年から『太平記』では富貴を願う客に変貌し、能『邯鄲』ではまた仏法を求める求道者に変わっていることは既によく知られている。だが、盧生の人物像だけではなく、楚国の勅使が盧生を迎える場面、宮殿の描き方と山場の酒宴、盧生が仙家の酒を飲む場面にも、能『邯鄲』特有の描写が多く見える。能作者は中国の素材を用いながらも、日本の漢詩文受容の伝統に沿って、自らの想像力を膨らませ、舞台上に日本化した中国を創り出している。テキストの精読を通して、能『邯鄲』ではどのように日本化した中国を描いているのかを明らかにするのが本発表の目的である。
「宮澤賢治『春と修羅』における主体とそのまなざし ―モダニズム文学との交差点―」
法政大学日本文学科 村山 龍
宮澤賢治がめざした「第四次元の芸術」とはなんであったのか。文学のみならず、音楽や演劇など、多岐に亘る芸術分野に関心を示した賢治は、『春と修羅』(東京関根書店、1924)のなかで、自らの文学テクストを「心象スケッチ」と呼んでいた。彼にとっての文学的営為は、従来の文芸形式としての詩ではなく、あらたな芸術様式としてはじめられたのである。本発表では、このような賢治の芸術観と同時代の文学/思想状況とを比較検討することを主眼とする。具体的には、『春と修羅』における主体の認知のあり方を問い、それと同時代のモダニズムに関するテクスト群との距離を問題化していく。賢治が「けだしわれわれがわれわれの感官や/風景や人物をかんずるやうに/そしてたゞ共通に感ずるだけであるやうに/記録や歴史 あるいは地史といふものも/それのいろいろの論料といつしよに/(因果の時空的制約のもとに)/われわれがかんじてゐるのに過ぎません」と述べるように、その認知の中心には、モダニズムの主知主義とよく似た視座が据えられていたと考えられる。第一次世界大戦・関東大震災後に既存の価値観が大きく揺らぐなかで、宮澤賢治のテクストとモダニズム詩のそれぞれが企図し、試みていたものの差異を探ることで1930年前後の文学状況に新たな考察を加えていきたい。