小秋元段著『太平記新考』が刊行されました

2024年2月、汲古書院より小秋元段先生(日本文学科教授)の著書『太平記新考』が刊行されました。

本書は『太平記』の本文・作品研究等にかかわる15章からなる研究書となります。このうち、第4部第1章「国文学研究資料館蔵『太平記』および関連書マイクロ・デジタル資料書誌解題稿」は初出時の内容に対して、国文学研究資料館におけるデジタル資料の公開の進展を受け、大幅に増補されています。また、第5部「研究の来歴」第2章「1999年~2023年」も、本書への収載にあわせて、最新の研究動向まで論評されています。

日本での研究者人口の減少を踏まえ、「世界のどこかにいる、『太平記』に関心を寄せる若手が、本書を頼りに伝本の情報を収集し、研究動向を把握してくれれば嬉しい」と著者は語っています。

ぜひ、お手にとってご覧ください。

以下、書誌情報と目次でございます。

○*********○

【書誌情報】

発行:汲古書院

発行日:2024年2月20日

定価;12,100円(本体11,000円+税)

頁数: A5・440ページ

ISBN: 9784762936852

【目次】

はじめに

第一部 古態の探究

 第一章 巻四における古態本文の探究
  一 はじめに        
  二 異同の概要       
  三 A系統とB系統の先後
  四 A系統増補記事の典拠  
  五 D系統・E系統の位置  
  六 むすび

 第二章 巻三十八の古態本文とその世界
  一 はじめに        
  二 畠山道誓滅亡記事の異同 
  三 両系統の先後関係
  四 細川清氏討死記事の検討 
  五 細川頼之に対する評価の問題

第二部 神田本の検証

 第一章 神田本本文の基礎的考察――巻十六を中心に――
  一 はじめに        
  二 神田本本文の基底――玄玖本との比較から――
  三 神田本巻十六の古態性  
  四 神田本の古態性に対する留保 
  五 巻十五後半について   
  六 むすび

 第二章 巻二十七「雲景未来記事」の編入過程
  一 はじめに        
  二 巻二十七の異同の概要  
  三 巻二十七の本文異同にかかわる主な先行研究    
  四 「雲景未来記事」の位置と評価            
  五 神田本・西源院本の古態性に対する疑問      
  六 諸本の検討       
  七 吉川家本の検討     
  八 むすび

 第三章 神田本の表記に関する覚書――片仮名・平仮名混用と濁点使用を中心に――
  一 はじめに        
  二 片仮名・平仮名混用の淵源 
  三 神田本『太平記』の表記法の全体像        
  四 片仮名・平仮名使用の実態
  五 他資料の状況      
  六 濁点の使用     
  七 むすび

第三部 作品とその周辺

 第一章『太平記』における禅的要素、序説
  一 はじめに        
  二 研究史を振り返る  
  三 禅に由来する句の引用
  四 『太平記』作者と禅宗との距離          
  五 むすび

 第二章『源平盛衰記』と『太平記』――説話引用のあり方をめぐって――
  一『太平記』と『平家物語』諸本  
  二 延慶本における説話引用 
  三 盛衰記における説話引用    
  四 『太平記』における説話引用   
  五 むすび

 第三章『梅松論』における足利尊氏――新たなる将軍像の造形――
  一 『梅松論』における歴史叙述  
  二 尊氏正当化の方法   
  三 頼朝と重ね合わせること 
  四 御当家の佳例         
  五 新たなる将軍像の造形 
  六 観応擾乱の影

 第四章 室町時代における『太平記』の享受――『応仁記』を中心に――
  一 十四世紀前半における『太平記』の享受   
  二 『応仁記』における『太平記』受容
  三 なぜ『応仁記』に注目するのか

第四部 伝本の考察

 第一章 国文学研究資料館蔵『太平記』および関連書マイクロ・デジタル資料書誌解題稿
  はじめに    
  一 写本    
  二 古活字本    
  三 整版本     
  四 抜書   
  五 参考太平記および関連書    
  六 太平記賢愚抄  
  七 太平記鈔・太平記音義 
  八 太平記秘伝理尽鈔および関連書 
  九 太平記評判私要理尽無極鈔 
  一〇 太平記大全および関連書   
  一一 太平記綱目   
  一二 首書太平記  
  一三 太平記在名   
  一四 その他         
  附 国文学研究資料館蔵『太平記』および関連書書誌

 第二章 国文学研究資料館所蔵資料を利用した諸本研究のあり方と課題
               ――『太平記』を例として――
  一 はじめに         
  二 『太平記』写本について 
  三 『太平記』古活字本について
  四 『太平記』整版本について 
  五 『参考太平記』『太平記秘伝理尽鈔』について
  六 マイクロ資料をめぐる課題 
  七 むすび

 第三章 松浦史料博物館所蔵『太平記』覚書
  一 はじめに
  二 その古態性
  三 本文の混合化
  四 各巻の本文
  五 むすび

 第四章 東北大学附属図書館漱石文庫所蔵古活字版『太平記鈔・音義』表紙の復原的考察
  一 はじめに         
  二 漱石文庫の『太平記鈔・音義』
  三 『太平記鈔・音義』の表紙裏反古     
  四 刷反古をめぐって     
  五 むすび

第五部 研究の来歴

 第一章 一九八五年〜一九九八年

 第二章 一九九九年〜二〇二三年
  一 『太平記』とはいかなる作品か 
  二 『太平記』の文学史的環境(一)――漢籍受容を中心に――
  三 『太平記』の文学史的環境(二)――和歌受容、史的背景を中心に―― 
  四 諸本研究の進展      
  五 享受史研究の進展       
  六 日本語学的研究の可能性――むすびにかえて――

初出一覧
あとがき
索引
 人名の部
 書名の部
 『太平記』伝本の部
 研究者の部
 所蔵者の部

Comments are closed.