日文科教員3名が福州大学(中国)を訪問し、特別講義を行いました

  法政大学が中国福建省の福州大学と「学術一般協定」を締結するのにともない、日本文学科のスティーブン・ネルソン、尾谷昌則、小秋元段の3名が同大学へ派遣されました。本協定は、大学院人文科学研究科日本文学専攻・国際日本学インスティテュートと福州大学外国語学院日語系(潘秀蓉主任)の発議のもと、両校のあいだに締結されることになったものです。
  一行は3月17日に福州へ到着。18日に学部1年生の「総合日本語」の授業を見学。その後、学部2・3年生を対象に、法政大学の大学紹介と3名の教員による公開講義を行いました。講義題目はつぎのとおりです。

    ・「『平家物語』と武士の真実」       (小秋元段)
    ・「日本唐楽の舞楽曲《青海波》─音楽と歴史と文学と─」
                   (スティーヴン・ネルソン)
    ・「若者言葉と言語学」           (尾谷昌則)

  翌19日には王健副学長(国際交流担当)と懇談をし、今後の両校の教育・研究交流の発展について意見交換を行いました。その様子は、福州大学のホームページでも紹介されています(記事はコチラ)。
  福州大学は福建省の省都福州市にある総合大学で、1958年に設立されました。中国教育部が定めた「211工程重点大学」に指定された名門校で、19学部を擁し、学部生・大学院生約3万人が学んでいます。

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日本語検定にて日本商工会議所会頭賞を受賞

  平成二十四年度の第二回日本語検定(通算第十二回)において、団体受験をした法政大学日本文学科が日本商工会議所会頭賞を受賞しました。これは昨年秋に行われたもので、受験したのは1年生を中心とする希望者30名足らず、春に3級を取得した学生が2級に挑戦するというケースが多く見られました。

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大学院「日本文芸特殊研究Ⅱ」で、韓国研修旅行を実施しました

 2013年2月21日より2泊3日で、小秋元段教授、李章姫氏(国際日本学インスティテュート日本文学専攻)の引率により、韓国の慶州、清州、ソウルを訪れました。

慶州仏国寺。修復作業中の釈迦塔を見おろす。

 慶州(キョンジュ)では数々の王陵の並ぶ通りを抜け、仏国寺(佛國寺)と石窟庵(共にユネスコ世界文化遺産)を見学。仏国寺は、『三国遺事』(注1)にその名が見え、新羅時代に建造された寺で、「百万塔陀羅尼」よりも古いと指摘のある(注2)世界最古の木版印刷物「無垢浄光大陀羅尼経」が発見された場所(釈迦塔)です。「釈迦塔」のみ現在復元工事中で、ガラスで囲われていたのですが、工事中の今だけ「釈迦塔」を地上2メートル程の位置から臨むことができます(工事が終わると下から見上げることしかできません)。石窟庵は、仏国寺と同じく新羅時代に建立された寺で、内部には巨大な本尊(如来坐像)があり、それを数々の仏像が囲みます。バス停から石窟庵まで、山道を登っていくのですが、現在は整備されているから良いものの、体力は際どいところで、当時参拝した人々の足腰の丈夫さを実感します。また、石窟庵から臨む慶州の景観は、壮観であると同時に、現在の奈良県や大阪府南部と共通したものを感じ、懐かしささえ覚えました。

 清州(チョンジュ)には韓国高速鉄道(KTX)で移動し、「清州古印刷博物館」を訪れました。世界最古の金属活字印刷物「白雲和尚抄録仏祖直指心体要節(直指心体要節、直指。以下「直指」)」が印刷された地です。「直指」は高麗の禅僧、白雲和尚による上下二巻二冊の仏教書。「直指」の現物は、現在フランス国立図書館で所蔵(現存は下巻のみ)されているのが残念でならないのですが、当博物館では、「直指」を中心に、「直指」を解説する映像、金属活字印刷を生み出す工房を再現した一角、新羅・高麗・朝鮮時代の印刷物や活字の現物が多く展示されています。さらに当博物館では、学芸研究室長の黄正夏氏、イスンチョル氏(注3)が館内を先導してくださり、懇切丁寧な解説を賜りました。その際、李氏による素早く明快な翻訳で、言葉の壁は優に超えられました。また、朝鮮版を機とした、日本の古活字版の起源についての小秋元先生による講演や次稿(注4)も待たれるところです。

清州古印刷博物館。関係者との記念撮影。

 ソウルでは、世宗文化会館の附属展示施設、「忠武公(李瞬臣)物語」「世宗物語」を訪れました。李瞬臣、世宗と、二人の史上人物を展示物の区切りとして、その時代に開発・発展した文化や技術を展示してあります。4Dシアターや射撃ゲーム、亀甲船の再現、多くの印刷物など、その展示方法は多種多様で、大いに楽しむことができました。「国立中央博物館」は、古代から現代までの印刷物・金属活字・美術品・仏像等、主に慶州より発掘された膨大な数の物品を所狭しと展示してあります。一階から四階まで、その量は広大な面積に及びますので、熟視するには時間が足りず口惜しい思いをしましたが、展示品の内、特に文字が刻まれた物は、興味深い品が多く、我々の今後の研究活動の糧となるでしょう。「仏教中央博物館」は仏教(曹渓宗)に関する物品が展示されています。写経や印刷物、版木を筆頭に、仏国寺では見られなかった「無垢浄光陀羅尼経」のレプリカも展示してあり、新羅ひいては韓国の印刷文化を存分に学び取ることができます。

 加えて、仏国寺と石窟庵以外は、すべて無料で開館しており、開館時間は夜9時や10時まで、館内での写真撮影可能と、文化・歴史を開放する、韓国の積極的な姿勢も特筆すべき点です。

 以上、博物館の類を中心に話を進めましたが、他に韓国の食文化や慣習を経験することが出来、たいへん充実した3日間でした。

鍋料理も堪能。

(注1)一然『三国遺事』。青柳綱太郎編『原文和訳対照 三国遺事 全』(名著出版、1975年)などに所収。一然私撰の史書。「『三国史記』にもれた新羅・百済・高句麗三国の遺聞を九部門に分類して収録。」(『日本国語大辞典』)――法政大学図書館架蔵。

(注2)川瀬一馬氏「新羅仏国釈迦出の無垢浄光大陀羅尼経について」『書誌学復刊新33・34号』(日本書誌学会、1984年)に所載。「無垢浄光大陀羅尼経」は「百万塔陀羅尼」完成の19年前に完成した世界最古の印刷物として紹介。――法政大学図書館架蔵。

(注3)両氏は2007年から2010年に掛けて、「朝鮮王室鑄造金属活字復元事業」へ参加。

(注4)古活字版についての論文は次の通り。小秋元段氏「古活字版の淵源をめぐる諸問題――所謂キリシタン版起源説を中心に――」。法政大学国際日本学研究所『国際日本学 研究成果報告集 第8号』(2010年9月)所載。日本に於ける活字印刷技術の起源・経緯を論じた先行研究を整理し、問題点を洗い出す。――法政大学図書館に架蔵。

(報告 修士課程一年 藤井輝)

卒業式当日の日程

 卒業式当日の日程についてお知らせします。文学部の卒業式(学位授与式)は、例年通り武道館で行われます。時間帯は午後の部です。間違えないようにして下さい。その後は市ヶ谷キャンパスに移動し、844教室で学位記交付式が行われます。ここでは、学科主任から一人一人に対し、学位記が手渡しされます。夕方からは、スカイホールにて「卒業生を励ます会」が催されます。大勢の同級生が一堂に会して語らう最後の機会になるかもしれません。教員有志による余興(?)もあるらしいので、ぜひ参加して下さい。

3月24日(日)卒業式・各催しの時間と場所

学位授与式(文学部・法学部ほか、合同)
 場所:日本武道館
 時間:13:00開場、13:45開式、15:20閉式

学位記交付式(日本文学科)
 場所:58年間844教室
 時間:16:00~17:00

卒業生を励ます会(日本文学科)
 場所:ボアソナードタワー26階、スカイホール
 時間:17:30~20:00(19:30ごろ閉会予定)
 会費:無料
  ※立食形式(飲み物・食べ物が用意されています)

合格者の皆さんへ

田中和生 准教授

 みなさん合格どうもおめでとう。
 法政大学文学部の日本文学科は、どうして国文学科と言わないんでしょうね。
 実はもともとは国文科と言ったそうです。その名残は、入学されたみなさんが所属することになる、国文学会という名前に残されています(これだけ変えるの忘れたんだとか)。
 ではどうして日本文学科と変えたのでしょう。
 それは1945年に日本が敗戦を迎えたときに、これからの日本はそれまでとはおなじものであってはならない、という願いを込めたからです。
 実際、敗戦後に名前を変えた日本文学科は、戦後文学を牽引していく雑誌「近代文学」の創刊同人だった小田切秀雄をはじめ、有力な文学者や研究者が拠って、敗戦後の日本における文化創造に大きな力を発揮してきました。みなさんはその輝かしい伝統に連なると同時に、新しくその伝統を生み出していく存在です。
 すでに敗戦から60年以上が過ぎましたが、そこに込められた強い願いは風化することなく、これからも日本文学科という名前とともにずっとつづいていきます。われわれ教員の日々の研究も、その伝統を少しずつ更新することを願っています。春になって新しい伝統の創造に参加されるみなさんとお会いできることを楽しみにしています。
 以下、3名の教員からも合格者のみなさんへメッセージを預かっています。どうぞご覧ください。

2012年度学科主任 田中和生

合格者の皆さんへ (教員3名からのメッセージ)

専任教員の紹介ページ
https://nichibun.ws.hosei.ac.jp/wp/?page_id=78

『法政文芸』について
http://hoseibungei.web.fc2.com/

『法政文芸』編集委員ブログ
http://hoseibungei.blog103.fc2.com/

文芸創作プログラム「作家特殊研究」第二弾を刊行

  昨年度より始動した文芸創作プログラム「作家特殊研究」の記念すべき第二弾が刊行されました。
 今回は「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞した長嶋有氏を客員教授に招いて、氏と大学院生との対話の場が一冊の研究書にまとまりました。 「誰かがやっていることをやってもしょうがない」という氏とのインタビューから、作家年譜、氏との授業内でのやり取りから見えてきたもの、各作品の研究など、また参考資料として第100回~本誌発刊現在までの「芥川賞受賞作家笑顔指数コレクション」や、あの“パリコレ”をもじった単行本のおまけコレクションを集めた「ナニコレ?TOKYO」など、多岐多彩なものが収録されています。
 氏の人となりも分かり、長嶋文学に切り込んだ論考、そして研究冊子とは思えない表紙(イラスト藤子不二雄A)など細部まで大注目の一冊に仕上がりました。愛読者・研究者必読の一冊です。文芸創作家と大学院との対話が行われた“生きた”研究冊子です。一年間の軌跡をどうぞご覧ください。

「作家特殊研究」研究冊子2
編集長 長瀬由紀峰

※冊子をご希望の方は、下記までお申し込みください。

〒102−8160
東京都千代田区富士見2−17−1
法政大学80年館日文共同研究室内
「作家特殊研究」研究冊子刊行委員会
TEL&FAX 03(3264)9752

2012通信教育部冬期スクーリングが終了しました

2012年度通信教育部冬期スクーリングが1月21日(月)から始まり、2月2日(土)に無事終了しました。

今期は「日本文芸特殊研究(近代)」「日本美術史」「日本文芸特殊研究(中世)」「日本言語学概論」「西洋美術史」が開講され、密度の濃い授業が展開されました。

1月30日(水)には 「通教生のつどい」が開催されました。通信教育という性質上、同級生でも日頃はなかなか顔を合わせる機会がないと思いますが、学部や学科を越えて親睦を深めることができたのではないでしょうか。「教員への質問」コーナーでは、授業だけではわからない教員の素顔(?)も垣間見え、終始、笑いの絶えない楽しい会となりました。

1月24日(木)には、卒論一般指導と今年4月から始まる新カリキュラムに関する説明が行われました。

新カリキュラムについては、すでに郵送物や公式サイトにて説明していますが、近日中に新カリキュラムに関する説明動画もアップロードする予定です。
「今ひとつまだよくわからないなあ」という方は、そちらの方もどうぞご覧下さい。

New! 新カリキュラムについての動画をこちらのページに掲載しました!→新カリキュラムについて(2013年4月~)

能楽資料のデジタルアーカイブが閲覧できます

 野上記念法政大学能楽研究所では、所蔵している能楽資料のデジタルアーカイブを一般公開しています。世阿弥の伝書、光悦謡本、弘化勧進能の絵巻、江戸城の能舞台の絵図など、多くの貴重な資料が高精細画像で閲覧できますので、日文生の皆さんは是非ご覧下さい。勿論、一般の方も閲覧できますので、どうぞご利用下さい。

野上記念法政大学能楽研究所
http://www9.i.hosei.ac.jp/~nohken/index.html

能楽資料デジタルアーカイブ
http://www9.i.hosei.ac.jp/nohken_material/htmls/index/

坂本勝教授が「古事記出版大賞」を受賞しました

日本文学科で上代文学を担当している坂本勝教授の著書『はじめての日本神話 『古事記』を読みとく』(ちくまプリマ-新書、2012年1月刊行)が、このたび「古事記出版大賞」のうち「しまね古代出雲賞」に選ばれました。

「古事記出版大賞」は『古事記』編纂1300年目にあたる今年、奈良県が設けた出版賞で、過去5年間に刊行された『古事記』関係書のなかから、『古事記』の魅力をわかりやすく伝えた図書に授与されるものです。また、そのなかの「しまね古代出雲賞」は、『古事記』と出雲ともかかわりにふれた図書に授与されます。審査には、全国の図書館員約150名と、大阪・奈良の大手書店員があたりました。去る12月23日(日)に奈良県新公会堂で授賞式と記念シンポジウムが行われ、坂本教授には賞金と記念品(勾玉ブレスレット)が今井康雄島根県教育長より贈呈されました。

『はじめての日本神話―『古事記』を読みとく―』は初心者にも配慮した『古事記』入門書で、第Ⅰ部「あらすじで読む『古事記』」、第Ⅱ部「古代人が出会った〈自然〉」の二部構成となっています。本書によれば、古代の人々にとって神話とは「いま、ここに」自分があることの意味を説くものであったといいます。そして、自然と文化の相克のなかから神話が形成されてゆくさまが、わかりやすい語り口で本書では伝えられています。

神話とは何かについて根源から考えたい方、日本の古典文学に関心をもっている高校生の皆さんに、ぜひ一読をお勧めします。 (小秋元段)

『私小説の技法 「私」語りの百年史』(梅澤亜由美著、勉誠出版)が発刊されました


  12月15日に『私小説の技法 「私」語りの百年史』(梅澤亜由美著、勉誠出版)が発刊されました。西村賢太の『苦役列車』が芥川賞を受賞したのはまだ記憶に新しいところでですが、本書では近代日本独自の小説形式であるとされる私小説を前衛的な実験小説として位置づけ、「認識する私」と「認識される私」の関係性という視点から、独自の分析を行っています。詳細な目次は勉性出版さんのWEBサイトにありますので、どうぞご覧下さい。
  「大学での国語力」でお世話になった学生も多いと思いますが、梅澤先生は皆さんの大先輩でもいらっしゃいます。本書は、田山花袋の『蒲団』(1907)から小島信夫の『各務原名古屋国立』(2002)までの100年を辿り、私小説の成立と変遷を詳細に論じていますので、文学研究を志す学生の皆さんには特に読んでおいて頂きたいと思います。(尾谷昌則)