『最後の文人 石川淳の世界』(集英社新書)が刊行されました。
同書には、小林ふみ子先生(日本文学科教授)と田中優子先生(法政大学元総長、日本文学科卒)が寄稿されています。
同書は60年の長きにわたり独自の文学世界を切りひらきつづけ、「最後の文人」と称された文学者の石川淳(1899~1987)を<自由>という切り口から取りあげています。
初期の作品である「佳人」「普賢」から、軍事色が国に広がっていた時期に発禁処分をうけた「マルスの歌」、戦時下の<江戸留学>、60年代末の学生運動に触発された「天馬賦」、1971年から1980年にわたって書かれた大長編「狂風記」と石川淳の文業を通観した内容となっており、巻末には読書ガイドも付されているので、石川淳の文学世界に入りこむ格好の手引きとなっております。
是非、ご一読ください。
以下、出版社サイトから内容と目次の転載でございます。
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◆内容◆
グローバリズムと新自由主義が世界を制覇しつつある今日、人々の自由はむしろ制限されつつあり、閉塞感や分断が拡大している。
今、なぜ石川淳なのか?
この孤高の作家を読み解くキーワードは「自由」。
古今東西の書物世界を軽快な「精神の運動」で往還した石川の姿勢は知的自由の体現であった。
だから、多くの知識人が戦時体制になびいた時代にも、石川は黙らなかった。
かくして作品の発禁後、石川は自由を求め江戸の世界に向かう。
石川作品には不自由に抗する不服従の精神が刻まれている。
本書は5名の識者の解説を通じ、その作品と「絶対自由」の世界に誘う。
◆主な内容◆
第1章 絶対自由を生きる 田中優子
第2章 石川淳の〈江戸〉をどう見るか 小林ふみ子
第3章 石川淳『狂風記』論――〈江戸〉がつなぐもの 帆苅基生
第4章 石川淳流〈不服従の作法〉―「マルスの歌」 山口俊雄
第5章 たとえば「文学」、たとえば「佳人」――総合的石川淳論の方へ 鈴木貞美