『日本文學誌要』 第111号が刊行されました

『日本文學誌要』 (法政大学国文学会) 第111号が刊行されました。

2024年度をもってご退職されました、坂本勝先生の最後の講演、また坂本勝先生との思い出が掲載されております。

目次は下記の通りです。

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《講演》

『古事記』の原風景、海へ。 坂本勝

《論文》

慶長十五年刊古活字版『日本書紀』について 小秋元段

《思い出》

坂本先生の『古事記の読み方』 伊海孝充

水の男 加藤昌嘉

坂本さんのお酒 田中和生

がが芋の舟 中沢けい

坂本先生お勧めの宿 スティーヴン・G・ネルソン

大人(たいじん)、坂本勝さん 藤村耕治

坂本さんとカラオケを 間宮厚司

坂本先生の思い出 汪治東

坂本先生との思い出 壹岐優翔

《卒業論文》

『源氏物語』宇治十帖の和歌――和歌を声に出す描写とその効果―― 風間元太

『偐紫田舎源氏』阿子木の造形――自分の感情を貫いて生きる女性―― 杉村真侑

泉鏡花「春昼」「春昼後刻」論――怪異構造から読み解く物語―― 松井優

《学校教育の現場から》

コロナ中の学校・コロナ後の学校 宮負竣

《新刊紹介》

小秋元段 著『太平記新考』 李章姫

《法政大学国文学会彙報 二○二四度》

《法政大学国文学会会則》

《法政大学国文学会教員のつどい申し合わせ》

《『日本文學誌要』投稿要領》

《編集後記》

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『日本文學誌要』第112号は、2025年9月の刊行を予定しております。

学位授与式(3月24日)当日のお知らせ

日本文学科4年生のみなさま

日本文学科共同研究室からのお知らせです。

2025年3月24日(月)、 学位授与式(卒業式)当日の予定をご案内いたします。

学位授与式・学位記交付式の後に、日本文学科卒業祝賀会:「卒業生を励ます会」が開催されます。

当日の予定詳細は、右記をご参照ください。

「卒業生を励ます会」は、日本文学科と国文学会の共催で行われ、ボアソナードタワー最上階26階のスカイホールにて、18:00~20:00での開催となります。

参加費用は無料立食形式・お飲み物(アルコール含む)をご用意いたします。途中参加・退室OKです。

学生委員会による企画もお楽しみに!

昨年度は5年ぶりに開催され、多くの卒業生が先生方・同級生と共に過ごす、楽しく和やかなひとときとなりました。

皆さまお誘い合いの上、多数のご参加をお待ちしております。

『自由を生き抜く実践知大賞』で「自由な学風の継承賞」を受賞

先月14日に開催され2024年度(第8回)『自由を生き抜く実践知大賞』表彰式にて、法政大学国文学会(文学部日本文学科)が「自由な学風の継承賞」を受賞しました。惜しくも大賞は逃しましたが、学生編集委員会が中心となって年刊文芸誌『法政文芸』の企画・編集・発行を20年間にわたって行ってきたことが評価され、このたびの受賞となりました。詳細はこちらをご覧下さい。

『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』文庫版が刊行されました

2014年に岩波書店に刊行していただいた本を、KADOKAWAで文庫化してくれました。
一般書ではありますが、既刊の論文をふまえた論述だけでなく、草稿や校正原稿を使った分析など、いかに南畝が狂歌を流行らせたのか、真剣に文章と向き合ったかていねいに分析したつもりです。文庫化にあたって、旧著に対する書評への返答など、10年分の考察をふまえた解説を付しました。
                       (小林ふみ子 法政大学教授)


2024年9月、KADOKAWAより小林ふみ子先生(日本文学科教授)の著書『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』が文庫本として刊行されました。まさに今、25年大河で話題となっている絶好のこの機会に、ぜひお手に取ってご覧ください。

以下、書誌情報と目次は出版社サイトからの転載でございます。

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【書誌情報】

定価: 1,386円 (本体1,260円+税)

発売日:2024年09月24日
 
判型:文庫判
 
商品形態:文庫
 
ページ数:320
 
ISBN:9784044007980

 

【目次】

プロローグ
序章 大田南畝という人
第一章 狂歌の大親分になるまで
第二章 言葉のチカラで「役」づくり
第三章 われらが江戸自慢の流儀
終章 文芸界の大御所「蜀山人」として
エピローグ 成長しない社会の楽しみ方

『落語がつくる〈江戸東京〉』好評刊行中です

江戸東京研究センターの研究プロジェクトの成果集です。京都やヨーロッパの都市など古い建造物をはじめ、歴史が目に見えるかたちで残る都市とは異なって、度重なる震災、戦災に見舞われてきた江戸東京にとって、そのアイデンティティを支えるのはその土地をめぐる伝承、物語、慣習など無形の遺産でした。本書は落語をその1つとして捉え、下町の庶民の世界で展開する落語のなかで描かれる「江戸」が、地域的にも長屋という生活空間のありようにおいても、人びとの想像のなかで典型としての「江戸」像を作りだしていることを多角的に浮かびあがらせました。日本文学科からは中丸宣明・小林ふみ子が寄稿しています。

(小林ふみ子 法政大学教授)

田中優子先生(法政大学名誉教授)が編者をつとめた『落語がつくる〈江戸東京〉』が岩波書店

より好評刊行中です。同書には、日本文学科教授の中丸宣明先生・小林ふみ子先生が寄稿されています。

お手に取って、ぜひご覧ください。
以下、書誌情報と目次は出版社サイトからの転載でございます。


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【書誌情報】


刊行日 2023年09月14日
ISBN 9784000255080
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 246頁
定価 2,750円


【目次】


 はじめに………田中優子

Ⅰ 都市の物語としての落語
 1 江戸東京の物語としての落語………小林ふみ子
 2 落語――文化人類学の視点から………山本真鳥

Ⅱ 落語がつくる地理感覚
 3 動く江戸東京落語――「黄金餅」から出発して………川添 裕
 4 「文七元結」と江戸・東京………佐藤至子
 5 はるかなる「落語国」をさがして――落語のフィールドワーク………田中 敦

Ⅲ 長屋噺をめぐるフィクションとリアリティ
 6 「長屋」という思想………田中優子
 7 「怪談牡丹燈籠」の長屋………横山泰子
 8 「お節徳三郎」論――熊さん八つぁんたちのフェミニズム………中丸宣明

Ⅳ 長屋の比較文化論
 9 都市空間のなかの長屋――江戸東京とヴェネツィア………陣内秀信
 10 上海の長屋と滑稽戯………高村雅彦
 11 現代の長屋ぐらし事情………栗生はるか

東京文学フリマ39に出店!

東京文学フリマ39では最新の「法政文芸」20号を出します。
お買い上げいただいた方に「日本文学科100年法政文芸20年」の展示図録を差し上げます。先着50名様。
ブースは「しー1・2」(受付の前)です。
えこぴょんも皆様をお待ちしてます。

 

東京文学フリマ39
https://bunfree.net/event/tokyo39

長谷川啓編『新版 大田洋子 原爆作品集 屍の街 他11編』が刊行されました

長谷川啓氏(大学院日本文学専攻修了、国文学会会員)より、『新版 大田洋子 原爆作品集 屍の街 他11編』をご恵投いただきました。

以下、書誌情報・内容・目次は、出版社サイトからの転載でございます。

 

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【書誌情報】

発行:小鳥遊書房

発行日:2024年7月31日

定価:3,300円(3,000+税)

頁数:424頁

ISBN:978-4-86780-054-6

【内容】

「戦後」は続いている。

現在を「戦前・戦中」に変えないため、

一人でも多くの人に読んでもらいたい。

唯一の被爆国である日本で、
1945年8月6日の朝、広島で被曝して以来、
原爆小説を書き続けた大田洋子の作品を通して、
戦争を起こしてはならないことを実感するために。

「今度の敗北こそは、日本をほんとうの平和にするものであってほしい。」
(「屍の街」より)

*本書は2020年8月に刊行された『大田洋子 原爆作品集 屍の街』の新装、解説を更新し「新版」として刊行するものです。上製から並製に変更されています。収録作品は12編のままですが、本文レイアウトの変更により、頁数が圧縮され、本体価格は3,000円となります。

【収録作品】

 河原
 牢獄の詩
 屍の街
 過去
 恋
 城
 どこまで
 暴露の時間
 ほたる
 半人間
 残醜点々
 ある墜ちた場所

【解説】
「原爆の記憶が今日問いかけるもの――忘却の時代に抗して」(長谷川啓)

『法政文芸』第20号記念特別号が刊行されました

『法政文芸』は、2024年で創刊20周年を迎えました。『法政文芸』第20号記念特別号「特集・媒体を変えて読む/見る作品たち」が刊行されました。目次は下記の通りです。

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巻頭詩 やわらかい鍵 井口可奈

【『法政文芸』20号記念特集】

エッセイ 文芸の幸ふ国で 勝又浩

座談会  『法政文芸』今昔 田口武 須賀友子 井口可奈 山田俊介 大熊彩香 法政文芸編集部

総目次 『法政文芸』創刊号~19号 総目次

【創作】

《小説》

骨を捨てる 青木壮

すりきず 今屋桜子

Hinako 河村舞彩

シュレーディンガーの恋人 水上和寿

《短歌》

こわくてとっても 花澤希海

《掌篇セレクション》

デカすぎる日高屋 神野照一郞

宇宙のゴミ箱 三瓶真珠

【特集】媒体を変えて読む/見る作品たち

《インタビュー》

映像化のノベライズからアダプテーションを考える 大石圭

《エッセイ》

次の形へ しなの

デタラメな世界で戦う 遙洋子

自分のものであって自分のものではない 東川篤哉

どうする腰巻 宮木あや子

《特集企画》

クロス×メディア

《学生レビュー》

執筆者紹介・編集後記

表紙・絵+ロゴ作成 司修

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なお、『法政文芸』第21号は、2025年度内の刊行を予定しております。

『法政文芸』編集委員会 公式アカウントも是非ご覧ください。

 

「制度」としての文芸時評の終わりとこれから――田中和生『なぜ文芸時評は終わるのか』(アーツアンドクラフツ)を読んで

 本書のタイトル「なぜ文芸時評は終わるのか」にある「文芸時評」は、文芸時評そのものではなく「制度としての文芸時評」を指す。

本書の「はじめに」では文芸時評の歴史が紐解かれている。文芸時評は明治後期に自然主義作家らによって月刊誌等で成立し、小林秀雄が「創作家としての文芸評論家」として初めて文芸時評を担当する。やがて、新聞においてひとりの文芸評論家が継続的に文芸時評を担当するスタイルが誕生し、以降文学作品と文芸時評はお互いに影響を与えながら新聞で連載を重ねる「制度」として確立した。しかし、近年は新聞の発行部数が大きく減少し、文芸時評も社内の記者や不特定の論者が短期間で担当を交代するといった「制度」の変化を遂げている。加えて、文学作品の指向も大きく変化をした。隆盛した近代文学や戦後文学的思想は影を潜め、出版社は出版不況から作家および作品に売上に繋がる「興行的意味」を求めるようになる。

本書に収められた文芸時評は、このような状況下にあった2007年から始まる。著者はこの時期を文芸時評という「制度」の「崩壊期に入っていた」とし、担当を終えた2022年には「制度」は「過去のもの」になったとして、間もなく「制度」が「終わる」と告げている。

「制度」を確立させた平野謙は、文芸時評について大意ではあるが〈批評家たちが「否定的言辞」や「悪口」を言うもの〉(『文藝時評』)と述べた。この平野の見解を著者は否定することなく、その言葉の裏には「それだけ文学作品についての理想が強く共有されていたからにほかならない」という意志があったとしている。

確かに〈批評〉と〈批判〉は履き違えしやすい。なぜならば、時に辛辣な「否定的言辞」が紙面に躍るからである。本書での例をあげれば、東日本大震災後の2011年12月の文芸時評では「(書かれた作品が―引用者)震災や津波そのものより軽く、原発事故よりリアリティを欠いて」「文学が現実に負けている」とし「軽薄」と断じている。また、2017年6月の文芸時評では、ある作品に対して「ここに欠けているのは、作品の言葉が読者に審判されるという緊張感である。高い文学的な評価を得てきた作家による作品の書き方として、厳しく批判されるべきだ」という評価を下している。しかし、これらを単に「否定的言辞」としてよいのだろうか。私は、ここに著者が平野へ抱いたものと同様の〈文学作品に対する理想の追求〉を感じた。

乱暴を承知でいえば、否定すべきものには無視をする方法もある。だが、毎月数多くの新しい文学作品が世に出る中で、著者が俎上にあげた作品に手厳しい言葉を投げることは、何かしら言及する必要があると判断したからに違いない。したがって、その言葉の裏側にあるものを文学作品の書き手も、文芸時評の読者もくみ取る必要がある。そうすることで、文学は理想により近づくことが可能になるのだ。

著者は「あとがき」で、新しい文芸時評の「制度」とこれから文芸時評を担う書き手に期待を寄せている。それに呼応するかのように、WEB上で連載されるなどこれまでとは違った「制度」のもとで文芸時評は続いている。そして、本書に収められた文芸時評が掲載された2007年から2022年は、前出した東日本大震災と福島第一原発事故や、COVID-19の猛威による世界的なパンデミックといった大きな出来事に加えて、政治不信や経済活動の停滞および失速、それらに伴う経済的格差や思想による国民の分断の発生といった閉塞感を感じる期間でもあった。しかし、そのような中でも小説投稿サイトや文芸誌の新人賞への応募の増加、文学フリマの盛況といった現実は、文学作品で何かを表現したい書き手が数多く存在していることに他ならない。

このような現状が文学をどこに導くのかは分からないが、本書に収められた文芸時評とそこに潜む理想の追求は、これからの文学の行方を知る手掛かりとなるものと思われる。

 

(鈴木華織 2023年度博士後期課程満期退学)

田中和生先生(日本文学科教授)の新刊、なぜ文芸時評は終わるのか:アーツアンドクラフツ (webarts.co.jp)を、ぜひお手にとってご覧ください。